1.はじめに
こんにちは、デジクリ 16th 3DCG班 のYamatoと申します。デジクリでは、たまに3DCGの作品を発表させてもらったりしています。
この記事では、最近作ったフォトリアル系背景作品「帰省中?」を例に、作品の制作過程を紹介させて頂きたいと思います。以下に示す画像が、完成画像になります。
使用ソフト:Blender, Substance Painter, Photoshop
※あくまで制作過程の紹介なので、あまりソフトの使用方法に関しての細かい説明などはありません。その点をご理解頂けたらと思います。
2.リファレンスを集める
モデリングやテクスチャリングをしていくうえで、リファレンス集めは非常に重要です。
やはり、想像だけで作るというのは簡単な事ではないですし、今回のようなフォトリアルな作品ではちょっとした違和感が作品を台無しにしてしまうこともあります。
以下に示す画像は、集めたリファレンスの一部です。この画像を表示しているソフトはPureRefという無料のソフトで、たくさんのリファレンスを大量に並べて表示することができます。非常に便利なのでぜひダウンロードして使ってみてください!
ではどうやってリファレンスを集めて行けば良いか、今回の作品で使ったおすすめのサイトや検索の方法を紹介したいと思います。
おすすめサイト
- Pinterest イラスト系や3DCG系の作品、写真など、幅広い種類の画像がそろっている。サイトの仕様上なのか画像は縦型のものが多い。
- Artstation 3DCGの作品、イラスト作品といった世界中のクリエイターが作った作品が集まるサイト、いろいろ眺めるだけでも楽しい。
検索方法
検索方法としては、単語を組み合わせて調べるというのが一般的かと思いますが、それを説明してもあまり意味がないと思いますので、ここでは少し違ったアプローチでの方法を紹介したいと思います。
まず一つ目は、最初に示したおすすめサイトなどから得られた良いと思うリファレンスをGoogle画像検索にかけて、似た系統の画像を探し出すという方法です。今回の場合、これをしたことでメインに据えたリファレンスの建物に関するサイトが見つかり、非常にスムーズなリファレンス集めが出来ました。
二つ目は、ヤフオクといったネットオークションサイトで検索をする方法です。この方法は基本的に小物のリファレンスを集めることに向いた方法です。この方法の良さは、商品の状態を伝えるために複数の方向からの画像が用意されているので、必要なリファレンスが簡単に集まることです。今回の作品で言うと、扇風機はレトロなものにしたかったので、ヤフオクで「昭和」+「扇風機」といった形で調べて、集めていきました。
3.モデリング
モデリングの工程では、ラフモデルの作成→メインのモデルの作成という流れで行っていきました。
3.1 ラフモデルの作成
ラフモデルの作成は、簡単な形状の作成とレイアウトを行うというシンプルな工程ではありますが、メインのモデルを作成するためのベースになるため、とても重要な工程です。
ラフモデルを作成する際に特に注意したのが、「スケール感」を正しく作るということです。「スケール感」が正しいとは、最終的な画として見たときに、3Dモデルが現実に存在するものと同じサイズとして感じ取れるみたいな状態のことです(たぶん)。この状態にするために、ラフモデルの段階では人のモデルを配置したり、障子や畳などの一般的なサイズを調べたりするといったことをしながら、それらを参考にモデリングをしていきました。
3.2 メインのモデルの作成
メインのモデルの作成では、カメラから映る部分を重点的に作り込んでいきました。
静止画作品はカメラが動くことは無いので、基本的にカメラから映るところを作り込んでいきます。ただ、ライティングによっては、画面外の物の影が入ってきたりするので、そういった部分も意識しながら作り込む必要があります。
また、より現実に沿った雰囲気や生活感を出すため、畳に凹みを加える、雨どいを少し歪ませるといった方法でモデルの情報量を上げました。こうした、ちょっとしたひと手間がよりリアルに感じてもらうことへとつながっていくと思っています。
3.3 モデルの配置
この作品のテーマとしては、おばあちゃんの家に孫たちが帰省してきていて、その様子を偶然通りがかった近所の人が覗いたというテーマです。
そのテーマに合わせて、靴の雑に脱がれた感じや虫取り網などの小物の配置で、どういった人がいて、どういった動きをしたのかを感じ取れるようにしました。こうしたストーリー性の感じられる画作りをしていくことで、より魅力的な作品にしていくことができると思います。
3.4 UV展開
UV展開が分からないという方のために、簡単に説明させて頂くと、UV展開というのは完成されたペーパークラフトを最初の状態に戻すというイメージです。3Dの情報を2Dの情報に置き換えるというわけなので、3Dのモデルに切り込みを入れるなどして、2Dの平面の状態にするという感じです。 この作品は、柱や机など木目のあるものが多く、UV展開の段階で、特に向きに注意を払いながら、UV の配置をしていきました。こうすることで、後の工程であるテクスチャ作成での作業がしやすくなるだけでなく、木目がおかしな方向になるといったことを防ぐことが出来ました。 以下に示す画像は、柱や土台のUVです。画像からもわかる通り、向きを統一していることがわかるかと思います。 UV展開についてもっと詳しく知りたい方はこちら
4.ライティング
今回はHDRIによるライティングのみですが、光の入り方や影で画に情報量を持たせるため、HDRIの位置や角度の調整を行いました。
5.テクスチャ作成
テクスチャ作成は、基本的にSubstance Painter(学生版は無料!)というテクスチャ作成専用のソフトを用いて行いました。とても質の高いテクスチャを作ることができるソフトなのでおすすめです!
※ソフトのライセンスの更新がまだ出来ていなかったので、作業画面の画像が用意できませんでした、、
もしかしたら後日追加するかもしれないです。
この作品は、木で作られた部分が多く、屋内と屋外といった異なった条件下での木のテクスチャを作成する必要がありました。
例えば、土台の部分は雨風にさらされ色あせていたり、柱の上部はカビなどによる黒ずみがあったりといった風に、その木が置かれている状況を意識しながらテクスチャを作成しました。このように、木のモデル以外でもそのモデルの置かれた状況を意識しながら作成していくことで、テクスチャの説得力が上がっていくと思います。
Substance Painterを勉強したい方は、こちらの動画がおすすめです!木のテクスチャもこちらの動画を参考に作りました。
6.レタッチ・仕上げ
作品のテーマとして、「夏」と「近所の人が覗き込んだ」という要素があるため、そのテーマがより感じられるようなレタッチを行いました。また、Instagram でテーマに沿った雰囲気のフィルターを試し、それに似せた形でPhotoshop でレタッチを行うという手法をとりました。
夏っぽさとしては、夏の日差しの強さが感じられるように、地面を白飛びしたような状態にし、覗き込んだ様子の表現では、手前に植物を配置し、ビネット効果(角が暗くなるような効果)を加えました。また、フォトリアルに見せるための要素として、色収差(レンズなどの影響で色のにじみやズレの出る現象)を加えました。
こうした最終的なレンダリング結果だけでは得られない要素の追加や調整をして、完成です!
7.おわりに
最後まで読んで頂きありがとうございます!どちらかというと中級者向けの内容だったと思うので、初心者の方には専門用語が多く、分かりづらかったかもしれないです。ただ、何か一つでも参考になることがあったり、「3DCGで背景作ってみたい!」と思って頂けたら嬉しいです!