シンセのモジュレーションで遊ぼう【ブログリレー2020Summer 10日目】

DTM ブログリレー'20夏

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こんにちは。8月も中旬に差し掛かりますが皆様はいかがお過ごしでしょうか。私は大宮の森ASMRの公開を密かに楽しみにしている今日この頃です。
後期はもう少し学内へ自由に入構出来るようになってほしいと願うばかりです。


概要

今回はシンセサイザの機能の一つ、モジュレーションについて紹介します。一言で言えば音に動きを与える機能です。
モジュレーションがなんとなく分かるとシンセサイザを使うのが一気に楽しくなる…と個人的には思っています。

この記事では前半1/3ぐらいで軽い前置きと説明をして、後半では動画を交えながら具体的な例を紹介します。

なお、記事の後半でHelmというフリーのシンセサイザが登場しますが、 HelmはDAW(曲を作るソフト)を持っていなくても使うことができます。

DTMをする方も、そうでない方も、この夏シンセで遊んでみませんか?

そういえばシンセサイザって何だ

一言で言うと、 電気的に音を作る楽器 です。略して「シンセ」とも呼ばれます。

現代においてはクラブミュージックからアニソンまで、幅広いジャンルで使用されている楽器です。

余談ですが、シンセは原理上信号処理や電子工学と深い関わりがあるため、用語などには理系由来の言葉が多く見られます。(モジュレーションもその一つです。)

モジュレーション is 何

モジュレーションとは、ここでは 「シンセの各種パラメータを自動的に変化させて音に動きを与えることorその機能」 を指します。

例えば音程のパラメータを小刻みに揺らしてビブラートのような音を作ったり、音量のパラメータを「一瞬で小さくなる」ように変化させて瞬発的な感じの音を作ったり、というようなことが出来ます。

文字で書いても分かり辛いですね。ということでこれから実際にやってみます。


やってみる

0. シンセの仕組み

モジュレーションの話を始める前に、シンセ全体の仕組みについて少しだけ説明します。なんか横文字がいっぱい出てきますが、やってることは割と単純です。

synth

オシレータから音が出て、フィルタで余分なものを取り除いて、エフェクトや音量の調節などを経て、最終的に出来たものが出力されます。 モジュレーションはこの流れのどこにでも介入してパラメータを弄ることが出来ます。

シンセによっては他にも色々機能があったり、モジュレーションの使い勝手に違いがあったりしますが、この流れは概ねどのシンセにも共通します。


1. 今回使うシンセ

helm

今回はフリーのソフトウェアシンセサイザ「Helm」を使ってみます。

パッと見すごく難しそうですが、どこに何があるのか分かればそれほど難解なものではありません。(これは本当)
とりあえず基本となるオシレータとフィルタを探してみると、

OSCILLATOR,FILTER

ここにありました。
ちなみにオシレータはどのシンセも画面左上方面にある場合が多いです。

そして、モジュレーションを司る部分は大体この辺りです。

MODULATIONS

今回はオシレータとモジュレーションしか触らないので、その辺の位置関係だけなんとなく掴んでもらえればOKです。

では、今回はモジュレーションの例として「 LFO 」と「 エンベロープ 」というものを使ってみます。


2-1. LFO

LFO

LFO (Low Frequency Oscillator) は、低い周波数(=ゆっくりした周期)の「波」を生成します。この「波」を使っていろんなパラメータの値を揺らします。

例えばこの動画ではLFOで音量を揺らしたり、音程を揺らしてUFOが近づいてきたときみたいな音を鳴らしています。
(効果をわかりやすくするために片方のオシレータの音量を最初に切っています。)
※動画がうまく表示されない場合はページを再読み込みしてみてください。

そう、UFOの音はLFOから生まれたのです。(たぶん)


2-2. エンベロープ

ENVELOPE

次はエンベロープ (厳密には「エンべロープジェネレータ(EG)」) を使ってみます。

エンベロープ とは「量の変化」をコントロールするモノで、
「音が 出る瞬間 / 伸ばしている間 / 出終わる瞬間
に何かの「量」がどのように上下するのかをコントロールします。
ここで言う "何かの「量」" というのは何でもいいのですが、初めての方はとりあえず「音量」だと思って考えてみると理解しやすいかもしれません。

エンベロープには普通、

  • アタック(Attack : A)
  • ディケイ(Decay : D)
  • サスティン(Sustain : S)
  • リリース(Release : R)

と呼ばれる4つのノブやスライダーが付いています。4つの項目をまとめて"ADSR"と表記することもあります。

ADSR

この図は横軸が時間で縦軸が "何かの「量」" です。
ADSRはそれぞれこの矢印部分の時間や量を表します。

例えばこの動画では、エンベロープの設定を変化させることで音量の変化をコントロールしています。
(Helmでは一番左の「AMPLITUDE ENVELOPE」が初めから全体の音量変化をコントロールするエンベロープとして割り当てられているので、さっきのようなモジュレーションの割り当てはしていません。)


3. 使用例

実際に曲の中でモジュレーションを使ってみようと思います。

Helmに内蔵されたプリセット「SF Clarinet」を使ったメロディラインに、ビブラートのような効果をかけるためのモジュレーションをしてみます。

ビブラートというのは普通、音の出始めから音程が揺れている訳ではなくて、音を伸ばしている間に徐々に音程が揺れ始めます。
今回はそれを「 『音程を揺らすLFO』の強さ を、 エンベロープ で変化させる」という方針で再現してみたいと思います。

この動画では、初めにプリセットから何も触っていない状態で短いメロディを再生した後、LFOだけかけたもの、LFOにエンベロープをかけたものを再生します。

プリセットそのままだと棒読み感があって、音程にLFOだけかけても「なんか音程が揺れているだけ」で変な感じになってしまいますが、LFOの強さ(振幅)にアタックの長いエンベロープをかけるとちょっとビブラートっぽい感じになるのが伝わるでしょうか…?


あとがき

今回はシンセサイザのモジュレーションについて紹介してみました。アイデア次第でいろんな音が作れるので、純粋に色々弄ってみるだけでも結構楽しめます。是非お試しあれ。

記事の最初にも書いた通り、HelmはDAWを持っていなくても1つのアプリケーションとして起動させることができます。(Win/Mac/Linux対応) クリック操作で音が鳴らせるキーボードも表示されているので「ちょっと試してみたいな」と思った方は是非ダウンロードしてみてください。

公式サイトに行くとダウンロードする直前に寄付を募る画面が表示されますが、一番右にある金額入力フィールドを選択して無記入のまま進めば無料版をダウンロードできます。(有料版と機能的・ライセンス的な違いはありません)

そういえばHelmはオープンソース開発でライセンスもGPL3なので、中を覗いてみたい方や改造したい方(?)にも良いかもしれません。

以上です。ここまで読んでいただきありがとうございました。

参考文献および外部リンク