ビデオゲームのグラフィックってなんだ?【ブログリレー9日目】

CG

この記事はデジクリブログリレー企画9日目の記事です。

こんにちは。 デジクリブログリレー企画最終日です。 企画主の15期秋月です。CG班です。 この企画、思いつきでやったにも関わらず学年関係なく幅広い方が参加してくれて嬉しい限りです。 ご参加いただいた皆さん、ブログを読んでくださった皆さん、デジクリブログを開発してくれたインフラの方々、改めてありがとうございました。


はじめに

さて、さっそく内容に移りたいと思います。 今回私書いていくのは、ビデオゲーム(以下、ゲームと表記する)のグラフィックの役割を今一度考えてみようというものです。

皆さんはゲームのグラフィックってなんだと思いますか?
ゲームを美しく彩るもの?リッチに演出するためのもの?没入感を高めるもの? もちろん、ここで何が正しいとか決めるのはナンセンスだと思いますが、この記事ではもう少しゲームのグラフィックであることに焦点を当てて考えて行こうと思います。

あくまで一個人の持論として、制作者として魅力に思える点を考えていきますが、様々な人に楽しんでもらえるような記事を心がけたので、ぜひ目を通してみてください。

ゲームのグラフィックはただ美麗であるだけでいいのか

最近ゲームを評価する際に「美麗なグラフィックが魅力」みたいなワードをよく聞きます。 確かに綺麗なグラフィックって、圧倒されるし感動するし魅力的ですよね。 でもそれは映画やアニメなどの映像作品などにも言えることだと思います。(もちろん綺麗なグラフィックでゲームプレイできるのがいいんじゃいという意見もあると思います) 本記事では、映像作品にはないゲームならではの特徴となるグラフィックの性質ってなんだ?というのを考えていきたいわけです。

ここでは現時点での私の考えとして、ゲームを制作する上でグラフィックとして重要だと思うことのうち2点を取り上げたいと思います。


①自然さを追求する

ゲームのグラフィックでまず一番に大切であるのはその自然さなのではないかと思います。 ここでいう自然さというのは2点あります。

一つはゲームから連想されるイメージと合っていること。 そしてもう一つは、対応づけが自然であることです。

ゲームから連想されるイメージ

ゲームのグラフィックは現実=リアルな世界に近づければ自然になる。 私はこれは否だと考えます。大切なのはそのゲームらしい表現を心がけることです。

引用:任天堂HP 仕事を読み解くキーワード『ゲーム世界に「ありえる」を』

ゲームにはゲームごとに適したグラフィックがあると考えています。 ゲームのグラフィックは、そのゲームの「らしさ」を表し、看板としての役割を担うこともあります。

これを追求していくことはゲーム制作の楽しさの一つだと思っています。

対応づけが自然であること

ゲームメカニクスとそれを表象する虚構世界(ここでは一旦グラフィックを指すことにします。詳しくは脚注₁)は恣意的なもので、特別な結びつきがあるわけではありません。₂ ですが、ゲームメカニクスとそのグラフィックにおいて自然な対応づけがされるとそのゲームプレイはリアリスティックなものになり、体験価値が高くなるのではないかと考えています。

自然な対応づけとは、グラフィックとそれによって表されているゲームメカニクスが相対的に一致していること、したいこととできることが自然と対応づけられることです。 例えばコントローラのスティックを前に倒すと前に進むとかそんな感じのことです。

当たり前じゃんとか思うかもしれませんが、とても大切なことだと思います。 この対応づけをちぐはぐにしてしまうと不自然さが目立ち、ゲームプレイを阻害することもあります。(逆にそれを利用して面白くすることも可能だと思います ex.「BABA is YOU」)

引用:『ポケットモンスター ブリリアントダイヤモンド・シャイニングパール』公式サイト


②手がかりをもたらす

さて、ここにドアがあります。 このドア、皆さんはどう開けるかわかりますか?

こんな何もない見た目では、ほとんどの人はどうすればいいかわからないと思います。 では、次のようなドアではどうでしょうか?

このドアにはドアノブついているため、ドアノブを回せばドアを開けられそうですね。 このように少しの手掛かりを与える事で、利用者はすんなりと道具を使うことができるようになります。₃

このようなことはゲームにおけるグラフィックにも同じことが言えます。

これを応用して敵のデザインを考えてみよう

というわけでカニをモチーフとした敵キャラクターでも考えてみましょう。

さて、これはいらすとやさんから拝借したカニです。 これを倒すゲームだと仮定します。皆さんはどう倒しますか?

これじゃちょっと物足りないですね。もう少し工夫してみましょう。

...
...
...

※ちゃんと利用規約の範囲内での編集です

どうでしょうか? 皆さんはこのカニを見たとき、どういう印象を受けたでしょうか。 体の部分が硬くて攻撃通らなそうだな、左のツメが強そうだから右側に避けていた方が良さそうだな、右目がむき出しであそこを攻撃すれば倒せそうだな… という考え方が出来たりしませんかね?

ともかくここで言いたいことは、グラフィックもゲームデザインに大きく関わるということです。 ゲームにおけるあらゆる視覚要素はプレイヤーの行為を左右し、ゲーム体験に大きく関わります。₄ 今回はキャラクターデザインを例にしましたが、背景やUI/UXデザインなども同様のことが言えると思います。

引用:ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド パッケージ版 | My Nintendo Store(マイニンテンドーストア)


さいごに

ゲームにおけるグラフィックがただゲームの見た目をリッチにするだけの存在じゃないことが伝わったでしょうか? 少なくとも私はそう考えているということが伝われば万々歳です。

ですが、ゲームのグラフィックはデザイナーだけでは実現できないことが多々あり、プランナーやプログラマーとの協力が必要不可欠となってきます。

これは私の願望となりますが、ゲームのデザイナー/アーティストも立派なゲーム制作者であることを頭に入れておいてもらえると幸いです。


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脚注

  1. 虚構世界とは、想像から作られる世界であり、これは言語や画像などの記号システムで表象される。ここでは虚構世界を表象するもののうち画像=グラフィックに限定している。ちゃんと知りたい方は「ビデオゲームの美学」の第六章を参照。
  2. 例えば土管を操作してハンガーを飛ばして葉っぱを攻撃するような虚構をもつゲームでも成立するだろう。ただ奇妙なゲームができあがるだけである。
  3. 人が環境から得ることができる行為の手がかり=行為可能性をアフォーダンスという。例えば、イスは座ることを支持する(アフォードする)。ドアは開けることをアフォードするが、力のない小さい子供にはアフォードしないかもしれない。ドアの取っ手のように、アフォーダンスを制約する(取っ手の形状によりドアを押すのか引くのかスライドさせるのか行為の可能性を制限する)ことによって適切な行為を行えるようにすることができる。このようなデザインによる行為可能性の制約はシグニファイアという。詳しくは「誰のためのデザイン?」を参照。
  4. プレイヤーがどう行動するか考えるときに参照する要素は、視覚要素だけではない。サウンドやテキストもプレイヤーの行為を左右する要素となりえる。

参考文献